やっぱり
いいえ やっぱり、帰したほうがいい 疼きはじめる、身を任せてしまいたい熱の中でもうひとりの私の声がする 雅治が帰るのを、本気でためらっていたとしても 離れがたい、そんな振る舞いの全てが私に見せるための演技だったとしても それはどちらも、私を思うからのふるまい だから 力づくでそちらに舵を切るのは愛情の証明とは言えない気がした もういい、でしょう? 私は、私をなだめる 雅治の明日まで疲れさせるのは本意じゃない この部屋を出て、ホテルに帰ればたぶんやっぱりホッとして私の隣で眠るよりもゆっくり眠れるはずで いつもの時間に、自分の予定通りに目を覚ますことができるだろう 若いときのようにジャンキーな時は過ごせない。 ちょっとずつにしないと胸焼けしてしまう 「ふふふ・・・・」 「うん?」 「もう、帰って」 「・・・え?」 「帰って。やっぱりそのほうが、いいでしょう?」 「・・・・・」
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