#あの時彼のところに行ってしまえてたら、たどりつく未来は変わっていたのかな。
あの頃の4月、東京に就職が決まって、私は初めて一人で暮らすことになって。希望に満ちてもいたけど、すごく心細かった。 当時の彼とは、大学の時からの付き合い。私が就職した東京からだと、ちょっと遠距離になった。といっても、車で2時間ぐらいの距離だけど。 東京の海の近くのホテルに泊まっての営業研修の時期があった。 その頃、彼に会えるのは週末だけで、日曜日、彼の家から東京に戻って来る時は、泣きたいぐらい心細かった。 会社を辞めて、彼のところに行きたいって思ったこともあった。 なんで自分は、家族からも彼からも離れて、東京に来てるんだろうって考えることも何度もあったかな。 覚えているのは、夜10時過ぎの人気のないバスターミナル。 彼の家から東京に戻ってきて、東京駅のバスターミナルで、ホテル方面のバスを待っている時、ビルとビルの間にまあるい月が出ていた。 春先の夜の風はまだ冷たくて。ビルの屋上に点滅している光と、月を見ていたら、ポロっと涙がこぼれた時もあった。 あの時、なんであんなに心細かったんだろう。なんであんなに寂しかったんだろう。 実家と同じような海の匂いがする時があったからかな。東京って、こんなに都会でビルばっかりなのに、時々海の匂いがするから。 あの時、もしあの心細さに耐えられず、彼のところにずっと行ってしまえてたら、未来は変わっていたのか
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