サクラ(8)
片思い
フィクションです。 ******** トイレで手を洗いながらどうするかを考えた。 そもそもあのおじさん大丈夫なんだろうか。 私こんなところでこんな時間にひとりでなにしてるんだろう。 なんですぐに帰らなかったんだろう。 そんな自問自答に答えはちゃんとわかっていた。 友だちとの予定がキャンセルになったのにすぐに帰らなかったわけ。 知らないおじさんに普段はしない親切を急にしてみたわけ。 靴屋さんのあとのおじさんに自ら声をかけてみたわけ。 今こうしてトイレでどうするかを考えているわけ。 それはその日が誕生日だったから。 そしてその年の誕生日が自分にとって少し特別だったから。 年齢とかではなくて生まれた年と同じ曜日の誕生日だったから。 ******** 私は土曜日に生まれた。 だからなんとなく土曜日が好きだった。 土曜日の午前11時過ぎに生まれたところも自分で気に入っていた。 時間外にならないなんとなくの親孝行な気がしていたから。 ひとり勝手に少し特別に感じていた誕生日に友だちから予定をキャンセルされて その場から帰ることができなくなっていた。 ******** フィクション

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