形式の似た感情(4)

フィクションです。 ******** 事情が事情だけに彼の持ち物は極端に少ない。 学校に必要なものをのぞいてしまえば数えられるくらい。 いつも同じナイキのスニーカーを履いてた。 いつも同じ濃い色のデニムを履いていた。 白いTシャツ濃いグレーのロンT カーキのパーカーウインドブレーカー たぶんそれを季節ごとに重ねたり脱いだりしていたと思う。 思春期で周りがおしゃれに興味を持っている中で 「必要なもの」以外持っていなくても平気なところが私は好きだった。 それは高校を卒業してもしばらくは同じだった。 周りの友だちが好きな車を買ってドライブに出かけても 燃費が良いという理由で選んだ車を彼は移動手段として乗っている感じだった。 そういうところが私は好きだった。 彼が少しずつ変わっていったのは高校を卒業して数年過ぎたころだった。 ******** 私が「家にいられない」事情のときは極力一緒に過ごしてくれようとしていた。 無理な日もあるけれど「まずは連絡して」と言ってくれていた。 それでも少しずつ一緒に過ごす頻度は減っていっていた。 ある日いつものように「家にいられない」日に彼が迎えに来
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