いつものように
昨年の手術以降、電話でささいな互いの今を告げあうようになり、それはしだいに当たり前の日常になった だから今は、逢うのに昔みたいな緊張感はなくて雲か霞かみたいな人に会う、逢いたいけれど逃げ出したくなるような、過呼吸気味なドキドキを感じなくてもよくなった 良く見せたい、のはきっとこの先も変わらない雅治にしても同じだろう だけどもし、無様であったとしても欠けていたとしても笑い飛ばしこそすれそれで嫌いになるようなことは多分もう無い 雅治はいつものように、助手席の座席を後ろに下げ背もたれを少し倒して いつものように、右手は私の左大腿部に添えられいつものように、そっと動き始める 「・・・ここ、私、土地勘が無いんですからね」 「わかった、事故しないように控えめにしておく」 「・・・もぅ」 「もう見つけた?ホテル」 「ええ、ここからそんなに遠くなさそうですよ。予約は難しそうだったから行ってみての話になりますけど」 「綺麗な部屋がいいね」 「ナビ設定してます、で、Google先生が教えてくれますから。ちょっとこのスマホ持って」 「ん・・・次を・・・そうあの信号を曲がるから、そろそろ右車線に入っていこ
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