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ささやかな思い出

遠距離恋愛
ビール片手に待っていた、追加注文の生春巻きは結局出て来ず、まだかなぁ・・・のうちに、デザートが先に来て 「もう、生春巻き追加分は除いてください、で、お会計を」 えへ、忘れてた・・・そんな顔をしつつも、ベトナム人の店員さんは 「アリガトゴザイマシター。オイシカッタ、ヨカッタデス。マタキテクダサイネー」 と、にこやかで。おおらかなその声に送られ、エレベーターに乗る  生春巻きを頬張った時の「へぇ・・なるほど、これは美味しいね」という雅治の顔や、思いがけない掘り出し物のベトナムワイン・・・ このささやかな夜の、味も時も。大事な、大事な思い出になる。  雅治は、パクチーも大丈夫だったあったほうが合うねと付け合わせのパクチーを小エビの唐揚げにのせて頬張る様子が妙に可愛くて これから、フォーや生春巻きを食べたり、ベトナム料理のTVを見たりしたら、この表情を思い出すんだろうな、きっと、なんて。  店員さんに笑みを返して、エレベーターの扉が閉まったとたん、すっ、と後ろに体重をかける。もたれかかった私を、雅治は何も言わずに支えた 理性のタガが外れるのは、3年前よりも早い    縦横に伸びる道路 似たような高い建物が並び、原色のネオン

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